お食事処 味久良(あじくら)
里山の寿司職人が比婆牛丼を作ったら・・・。
地元民が足繁く通うコスパ最高!のお食事処
備北丘陵公園に出向くことがあれば、ぜひ寄ってほしいお店の一つがここ「味久良(あじくら)」。店構えは、小さな定食屋さんといった感じですが、侮るなかれ、寿司職人として10年務めた職人さんが、一品、一品ものすごくこだわって作っているお店… なのにこのお値段で良いの!? と、思ってしまうくらい、コスパ最高でアットホームなお店です。
なんといっても、比婆牛と米「里山の夢」の共演メニューが素晴らしい。その代表的なのが「友三角焼肉丼」、もちろん比婆牛の友三角ですよ!
友三角とは、牛のもも肉の一部ですが、いわゆる「もも肉」とは似て非なるもの。もも肉の中でも牛一頭からわずかしか取れない稀少部位、しかも稀少な比婆牛の友三角ですから、どれだけ珍しい部位なのかということがお分かりになると思います。そして、知ってほしいのはそのやわらかな味わい。通常、もも肉は赤身の多い部位ですが、友三角はその中では最も脂がのっています。つまり、脂の美味しさを感じるカルビやロースと、肉の味をしっかり感じる赤身との良いとこ取りをした部位といえるでしょう。
まずそのまま食べて……
それから特製のたれをかけて食べてください。そして、崩した卵黄をからめて食べてみてください。食べるたびに味わいが変化して、それがまた楽しい!
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【たれをかけてひと口。まずは比婆牛の「友三角」という稀少部位の味は如何なるものか!?】
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【卵は庄原にある「横路鶏園」のもみじ卵。卵黄の味が濃厚、これをソースのようにからめて食べると一層、美味】
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【とろ~り卵黄とやわらかな友三角とのハーモニーがたまりません】
は・・・箸が止まらないっ。
でも、ちょっと待ってください。
この丼のすごいところは、比婆牛の稀少部位、友三角を使っているというだけではないのです。
友三角の下のごはんは、あの日本一の米と名高い「里山の夢」です。
「ホントだ、 ごはんが美味しいですね!」
「うん、確かに。違うね」
「味といい、ちょっと硬めの炊き上がりといい、この丼にすごく合う!」
初めて訪れたというお客さまからは、驚きの声が次々とあがってきます。
※撮影時のみマスクを外しています。
【こちらは比婆牛のバラとすじを甘辛く炊いたものをごはんにのせた丼、その名も「コスパ最強丼」。これって……すじとは思えない!】 ※取材用として特別にミニ丼にしていただきました。
「里山の夢」と名付けられた米。米も!美味しいといわれる庄原の中でも大変、評価の高い米で知られています。しかし、ここ味久良のある殿垣内町一帯は気候条件は特別良いわけではないといいます。それなのに、何度も日本一に輝いている「里山の夢」とは、いったい、どんな米なのでしょうか。
「『大阪府民のいっちゃんうまい米コンテスト』で日本一に選ばれたお米です」。
「大阪府民のいっちゃんうまい米コンテスト」とは、天下の台所、大阪で一般財団法人 日本米穀商連合会やお米マイスターなどが組織する実行委員会によって開催されるコンテスト。新米の時期に、全国の米どころからその年に最も良い出来のが集まってきます。審査員をするのは、お米マイスターの資格をもつ米穀店など。米専門の目利きが厳しく審査をするのです。
こんなすごいコンテストで「いっちゃんうまい」の評価を得た米。 その他、「お米番付」(※1)「すし米コンテスト・国際大会」(※2)など、米のコンテストや大会で常に高い評価を得ています。
※1 お米番付・・・日本お米向上委員会が主催する米コンクール。ミシュラン星付き料理人など、各方面の食のプロフェッショナルと五つ星お米マイスター5名で、最終入賞米8種類を決定。食味計などの機器を使用せず、「人の五感で美味しい米」が選ばれる。
※2 すし米コンテスト・国際大会・・・世界に広がるすし文化の発展を目的に米・食味鑑定士協会などが開催するコンテスト。玄米、白米、白飯、すし飯の4工程で、米粒の整い方やツヤ、粒離れ、喉越しなどの項目で審査を行い、すし米に最適な米が選ばれる。
このお米の話になると、熱い想いが止まらないといった様子のオーナー黒田ご夫妻です。
全国の米のプロ、料理人にも評価される米のふるさとが庄原のこの一帯なのですね。これだけの評価を得るには、やはり相当な努力があったでしょうね。
「もともとの土壌が良いというのがあったんですよ。庄原の他の地域に比べて粘土質なんです。親父が言うには少し鉄分を含んでいるらしいです」
もともと恵まれていた土壌に、地域の人たちの知恵でさらに改良を加えたんですね。
「山の竹がね…、邪魔だというので切ったはいいが、それをどうしようかということになって、パウダー状にして堆肥に混ぜたんですよ。近隣の牛飼いの人から牛糞を分けてもらったりしてね、牡蠣殻も混ぜたりしたかなぁ。とにかく、自分たちで工夫して開発した独自の堆肥を作って育てているんです。本当は米だけじゃない、野菜もすごく甘くなるんですよ!」
竹粉のおかげでリン酸の吸収が促進され、それが米のうま味成分に良い影響を与えるのだそう。さらにそれを発酵させることで、堆肥内の微生物の働きを活発にします。こうした堆肥を繰り返し用いることで、土壌が改善され、保肥力も上がっていくそうです。
品種は「あきさかり」。この地域で同じ堆肥を使って、同じ方法で育てます。できた米は畑ごとに食味計などを用いてチェック。食味値80点以上のものが「里山の夢」という名前で世に出ることができるのです。中でも85点以上のものはプレミアム米と呼ばれます。食味値は、国内米の標準が65なので、80というのはかなり高い数値です。
「そんなすごいお米だと、炊くのも気をつかいませんか?」と聞くと、「はい!」と答えながら、笑顔になる黒田さん。
「やっぱり、その年によって水分量が微妙に違いますよ。だから毎年、新米が出たら炊いてみて確認します。それに寿司にするなら少し硬めに炊き上げたいとか、料理に合わせて考えています」
さすが、元寿司職人だけありますね!
お寿司だとすべて庄原産というわけにはいかないでしょうけれど・・・。そう、食材の宝庫庄原ですが、海が遠いので海の魚介類はなかなかね。
「でも常連さんの中には、いつも寿司っていう方もいらっしゃいますよ」
「それだけ、黒田さんの握る寿司が美味しいってことですね」
よくみると、メニューブックには職人のこだわりが。
*だし汁すべてにまぐろ節(しび節)の血合い抜き
*しゃりのすし酢は、秘伝の配合で作っている
*天ぷら塩は、オリジナルブレンド。時間をかけてすり鉢であたっている
*すし、造りしょう油は、オリジナル
*お造りのけんは、職人の手でかつらむき
これって、すごいことですよ。
まぐろ節(※関西では「しび節」と呼ぶ)は、高級料亭か、和食をかなり追求された料理人さんしか使わないと聞いたことがあります。その血合い抜きだなんて……比婆牛の友三角に匹敵する稀少性ですね。
天ぷら塩、すり鉢であたってる!
普通ね、塩に何か混ぜても粒子の大きさの違いで分離してしまうんですよね。だから、すりすりとすり鉢で合わせていく、これ和食の基本です。
お造りのけんもかつらむきですか!
機械で切った大根って、ホント、味気ないですよね。かつらむきするのが一番、お造りに合いますよね。
随所に和食職人としてのこだわりが見え隠れする一方で、比婆牛の牛すじラーメンや牛すじうどん、牛すじカレーなど、ホッとするようなお馴染みの食堂メニューも充実。比婆牛の牛すじは、前述の通り、おでんで見るようなすじと違って、肉そのもの! 黒田さんが作るなら、味も期待できますね☆
美味しそうなメニューがたくさんありすぎて選ぶのに困ってしまうかもしれませんが、そんな方は、こちらで紹介した「比婆牛の友三角焼肉丼」「コスパ最強丼」をぜひ♡
黒田さん夫妻の気さくな笑顔にホッとして、何度でも訪れたくなるかもしれませんよ。
店舗情報
店名 | お食事処 味久良 |
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住所 | 広島県庄原市殿垣内町183-2 |
電話番号 | 0824-74-0369 |
営業時間 | ランチ 11:30〜14:00Lo ディナー 17:30〜20:00Lo 20:30まで コースはご予約のみ |
定休日 | 月曜日、第1.3火曜日 定休日が祝日の場合は営業 |
ホームページ | https://ajikura2008.jimdofree.com |
取材・文/平山友美