東城蕎麦工房 みじゅくもん

手打ちの技と食材集めは職人級
土曜日だけのお蕎麦屋さん

【「東城まちなか交流施設えびす」別棟に毎土曜日オープン】
【「東城まちなか交流施設えびす」別棟に毎土曜日オープン】

庄原市東城町では四季を通じてお祭りが開催されます。中でも11月上旬に開かれる「お通り」は見どころ満載。大名の祭礼御興行列に武者行列、子どもたちの「母衣(ほろ)行列」などが加わり、総勢120名が東城町内を練り歩く一大行事です。そんな町のお祭りに「みじゅくもん」という有志で結成された小さな手打ち蕎麦の会が出店していました。聞けば、出店歴は10年以上、お祭りでは大人気でいつも行列ができていたのだとか。

地元のお祭りで人気もんだった「みじゅくもん」の蕎麦が毎週食べられるようになりました! 週に1回、土曜日だけのオープンです。

メニューもなかなかの品ぞろえ。

※撮影時のみマスクを外しています。
※撮影時のみマスクを外しています。

「何をお話したらいいかしら……?」

「みじゅくもん」を代表してお話いただいたのは、福岡房江さん。

そうですね、
せっかくなので「山掛け冷そば」を頂きながら、お話を聞かせてください。

  • 【「地産地消」を大事にしているので、山菜も自分たちで山に採りに行く】

  • 【つゆは数種類のかつお節や昆布などを合わせて作る。沸騰させないように静かに煮出すのが大事なポイント】

「土曜日の朝は、主人が4時くらいから来てね、幟を上げてお茶を沸かして… 開店の準備をしてそばを打つんですよ。」
「みじゅくもん」には、二八そばと十割そばがあります。

どちらも庄原産のそば粉を使うのが大前提。

福岡さんご夫妻とお友達の田辺さん末広さんの4人で切り盛りしていますが、4人共、全麺協(※)で四段位(最高段位は五段位)の認定を受けた実力の持ち主。それはぜひ、冷たいざるそばをいただいてみたいですね!

※全麺協・・・全国麺類文化地域間交流推進協議会。そば文化に関する様々な事業を行っています。

そば以外のおかずもそのほとんどが庄原産。

そば以外のおかずもそのほとんどが庄原産。

 できるだけ、自分たちで育てたり、山に採りに行ったりして調達し、丁寧に作ります。例えば、定食で添えられたタケノコの木の芽和え。タケノコ、木の芽はどちらも庄原の山で採ってきたもの。見た目の華やかさこそないけれど、「季節を感じてほしい」という福岡さんたちの気持ちが伝わってきます。

天ぷらの盛り合わせも人気。春はフキノトウ、秋はモミジの天ぷらが出ることも。折々で山に行って、そのときに採れたものを丁寧に下ごしらえして保存しておくそうです。

【この日の天ぷら盛り合わせは、エビ、しいたけ、フキノトウ、コゴミ、なす、むかご、栗】

 こちらのかき揚げもまた美味。揚げたてのサクサク! 手打ちのそばによく合います。

【揚げたてサクサクのかき揚げ。この日は、紅しょうが入りのキャベツのかき揚げ】

「季節をね、大切にしたいんですよ。それと、庄原の食材を主役にしたいの。」と語る福岡さん。

【「地域の人に支えられて今があります。」と笑顔で語る福岡さん】
【「地域の人に支えられて今があります。」と笑顔で語る福岡さん】

その言葉通り、「庄原愛」にあふれたメニューの数々。
 どのおかずについて尋ねても
「あ、それもね、自分たちで採りに行ってね。茹でて真空にして冷凍保存しておいたものなんですよ。」
「これもね、自分たちの畑で育てたものなんですよ」
・・・という答えが返ってきます。
 福岡さんの生き生きとした笑顔が忘れられません。

それにしてもメニューがたくさんありますよね。
「それはね、お客さまからの要望もあるし、自分たちで食べ歩きをして色んなそば屋さんのメニューをお勉強したりしたんです。全国にいるそば仲間からアドバイスをもらって、鴨南蛮そばやにしんそばなど、だんだん増やしていって、今ようやく2年目を迎えました。」

「みじゅくもん」の皆さん、本当に勉強熱心ですね。そばの段位を取るときも四段はその年によって会場が異なるため、福岡さんは会津磐梯で、ご主人は北海道で、田辺さんは兵庫県で取りました。遠くの県でもそば祭りがあると聞けば必ず行く。交代で運転しながら旅して回るのが楽しくて仕方がないそうです。

【実は手打ちうどんもある。しっかりとしたコシのある麺で、こちらも本格的!】
【実は手打ちうどんもある。しっかりとしたコシのある麺で、こちらも本格的!】

それからあまり大きな声では言えませんが、「みじゅくもん」には人気の裏メニューがあります。
それは手打ちうどんです! 
こちらはご主人ではなく、福岡さんご自身が打つそうです。

「うどんはね、メニューには載せないの。
 そば屋を止めて、うどん屋にしたら? って言われると困るから(笑)。」

ところで「みじゅくもん」という店名の由来は?
「人ってね、習い始めのころは教わったことを素直に聞いて上達していきますよね。でも少しできるようになると、自我が芽生えてきて人の言うことを聞かなくなったりする。でもね、私たちはそういうのじゃなくて、いつまでも『初心忘るべからず』でいようという思いを込めて… 『みじゅくもん』と付けました。」

【本当に仲良しなんですね! 素敵な「みじゅくもん」の皆さん】

「好きなことで繋がる」…… 当たり前のように思えますが、最近の私たち、好きなことで繋がる友人がどのくらいいるでしょうか。ハッシュタグで繋がる人はたくさんいても、リアルな時間を長く共有できる人ってなかなか出会えないものです。
一緒に食材探しをする、見つけた食材を一緒に調理する、それをどうやってお客さまに出そうかと一緒に考える、そして週にたった1日の営業です。この1日が3人の絆を一層深めていることは間違いありません。
3人が見つけてくれた「庄原の旬」、皆さんも週に一度、味わいに出掛けてみませんか?

店舗情報

店名 東城蕎麦工房 みじゅくもん
住所 庄原市東城町東城250-5 東城まちなか交流施設えびす別棟
電話番号 08477-3-0788
営業時間 11時~15時
定休日 日曜日~金曜日

取材・文/平山友美