EDITORIAL REPORT
編集部レポート
“初恋の香り”節分草に会いに行く!自生地巡り&近隣ランチ

“初恋の香り”節分草に会いに行く!自生地巡り&近隣ランチ

総領町の春を告げる山野草、セツブンソウ(節分草)。旧暦の大晦日にあたる節分の頃から開花し始めることが、名前の由来です。白く小さな花姿が愛らしく、柑橘のような芳香で、甘く爽やかなその香りは「初恋の香り」ともいわれています。

この花を一目見るために、開花時期の総領町には全国から山野草ファンが多数来訪。「どこで見られるの?」「いつ訪れたらいい?」などなど、ファン必読の自生地情報と、周辺のおすすめスポットを併せて紹介します。

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 例年2月上旬から3月初旬にかけて公開される、総領町のセツブンソウ自生地。2025年は2月8日(土)~3月9日(日)までを予定しています。公開地は全7ヶ所あり、庄原DMOのウェブサイトにて開花状況を随時お知らせしています。

(開花情報:https://www.shobara-info.com/special//4467

自生地には目印ののぼりが立っていて、地図を片手に自分で自由に巡ることもできますが、まずは道の駅『リストアステーション』に立ち寄るのがおすすめ。こちらの施設のシンボルである「光のドーム」は、セツブンソウの開花時期に合わせて案内所に早変わり。自生地マップを手に入れられるほか、保存会のメンバーによる詳細な説明を聞くことができます。

 今回お話を伺ったのは、「節分草保存会」立ち上げ当初より関わっているメンバーの1人である、ガイドの矢吹正直さん。まずは矢吹さんから、セツブンソウがどんな花なのかを教えてもらいました。セツブンソウはキンポウゲ科セツブンソウ属の多年草で、日本固有種の多年草。本州(関東地方以西:栃木県から山口県)に分布し、石灰岩地を好む傾向にあります。総領地域では、石灰岩地の下流域となる安山岩の礫質土(れきしつど)で弱アルカリ性の土壌に自生しているのだそうです。

 もともとは広島県では絶滅種とさせていましたが、地元の小学校の先生が校外学習の際に偶然見かけ、1985年に上下自然愛好のメンバーや広島大学の研究者などにより自生が再確認されました。その後、地元の皆さんの情報提供などもあり、詳細な調査に乗り出したところ、なんと40ヶ所以上で自生が確認されたのだそうです。今では、総領町で行われてきた公開や研究、イベントなどが報道されたこともあり、全国的にも自生の確認が進み、再確認当初は絶滅危惧種第Ⅱ類とされましたが、現在は準絶滅危惧種となっています。再確認された当初は観光資源のひとつとしてにわかに注目を集めたセツブンソウですが、メディアでも多数取り上げられたことで、山野草マニアや園芸関係者が町へ一気に押し寄せることに。残念ながら盗掘などの被害が相次いだため、有志が保存会を設立し、保護活動に乗り出しました。保護の方法としては、積極的に公開をすることで、人の目を多くして守ると同時に、保存会で種撮りして栽培したものを販売することで、盗掘を無くせたそうです。現在は7ヶ所で公開しているほか、栽培方法の確立や大学などと共同研究も進めているそうです。

光のドームでは、実際に育てているセツブンソウを年々成長していく順に見ることができます。2月中旬に訪れた取材時には、プランターに植えられたセツブンソウが3分咲きといったところ。香りを嗅いだり、可憐な花をたくさん写真におさめたりして、存分に楽しませてもらいました。セツブンソウのプランター隣には、ユキワリイチゲやキバナノアマナといったセツブンソウと同じ生態をもつ春植物(スプリングエフェメラル:春の妖精)といわれる山野草も並べられていて、植物好きの私は眺めているだけでワクワク…!

セツブンソウの花は、白い部分が花びらに見えますが、これはガクなのだそうです。紫色の部分がめしべで、開花時期を終えるとめしべが伸始め、やがて種子が入ったサヤとなり、5月に入ると種子を落とすそうです。

種から芽吹いた新芽は1年目が丸い葉っぱ1枚の形状の異なるものです。夏は地上部が枯れて、球根だけで夏眠状態となり、2~3年目で従来の切れ込みが入ったかたちの葉が増え、いよいよ花が咲くのは何と4~5年目になるのだそう…!水はけの良い日陰に自生するセツブンソウは山の斜面などに生えている場合が多く、種はどうしても下の方にこぼれ落ちていきます。ところが、エライオソームといわれる脂質などに富んだ付属構造をもつ種子を食料としてせっせと運ぶのがアリで、このアリのお陰で上下左右にセツブンソウがひろがっていくとのこと。また、爽やかな芳香はハナアブやミツバチをおびき寄せるためのもので、虫媒により受粉を助けてもらっているそうですよ。こうして、動物と上手に共生していますが、

 「でも、いちばん共生の役を担っているのは、実は人間なんですよ」と矢吹さん。セツブンソウは夏に地上部が枯れてしまうため、枯れた夏草が、覆いかぶさってしまうと発芽が困難になります。毎年、夏草をきれいに刈り取って、芽吹きやすい環境を整えています。以前は草刈りをして、牛馬の餌や堆肥にして利用する循環農業といわれる農業形態が長年続いてきました。トラクターや化学肥料を使うような農業形態の変化で、草を利用しないで放置してしまい、セツブンソウをはじめとする春植物が激減した一因になっています。今は私たちが自生地の草刈りをすることで、セツブンソウが自生できる環境を整えています。セツブンソウの自生地として知られるということは、人と自然が共存する里山といわれる環境を守る地域として認められているという証のようなものかもしれませんね」。

 有意義なお話をたっぷりと聞かせていただいた後は、いよいよ自生地を訪問。取材時は開花している自生地がほとんどなく、最も咲いていると思われる「➄奥宅裏(八幡神社)」に向かいました。

プランターとは違い、地面に根付いて花を咲かせるセツブンソウは、ただただ小さく、儚ささえ漂わせる可憐さ…。岩場から一生懸命に花姿をのぞかせる様子は、いじらしくもありました。小指の先ほどの本当に小さな花なので、自生地を訪れる際は、ぜひ注意して見てみてくださいね。

 道の駅『リストアステーション』光のドームでは、セツブンソウの自生地公開期間中、保存会メンバーと花守と言われるボランティアガイドが常駐しています。自生地巡りのスタンプラリーや寄せ植え教室、絵手紙や山野草写真講座なども行っているので、まずは足を運んでみてください。

現在募集している山野草コンテスト(写真の部、絵手紙の部、短歌・俳句・川柳の部、Instagramの部)で作品募集。募集期間は2/8~3/10です。
リストアステーションの特産品売場には、地元の造り酒屋『花酔酒造』のお酒や、『横山甘泉堂』の田総羊羹、『総領こんにゃく』の手作りコンニャクなどお土産が色々。地元のお母さんたちが手作りする、セツブンソウモチーフのアクセサリーやオブジェも人気です。

ランチはぜひ、道の駅に併設する『avenir town』で。彩り豊かな「シェフの創作おまかせランチ」(1430円)や、ブランド和牛・比婆牛を使った「鍋焼きハンバーグと炙りサーモンのサラダ」(2000円)、「比婆牛バラ肉の鍋焼き丼」(2500円)といった、シェフ渾身の料理が堪能できます。

 【問合せ】
道の駅 リストアステーション
庄原市総領町下領家1-3
0824-88-3050