EDITORIAL REPORT
編集部レポート
東城町の秋の風物詩「お通り」を見に行こう!

東城町の秋の風物詩「お通り」を見に行こう!

お祭りやスポーツイベントなど、各地で行事が催される秋。庄原市東部に位置する東城町では、例年11月初旬に400年以上続く伝統文化行事「お通り」が執り行われます。
 「お通り」とは、慶長6(1601)年、広島藩主福島正則の家老として、東城五品嶽(ごほんがだけ)城主となった長尾隼人正一勝が、関ヶ原の戦勝を祝して、祭礼御興行列に武者行列を加えたのが始まりとされています。

福島氏改易後に広島藩は浅野家となり、東城にも東城浅野家が家老として着任し、明治まで継続。その浅野家の時代に、秋祭りは11月1日の川西八幡宮から5日の世直神社まで5日間にわたって催され「五日催し」と呼ばれました。
享保4(1719)年、東城浅野家の祈願により、川西八幡宮・天神社の神輿が東城へ神幸することとなり御旅所まで渡御。世直神社の祭典終了後、両神輿が行列を組み、町内の街筋を巡行し、夕刻までに八幡宮に還御する最終日の神輿渡御行列を「お通り」と呼ぶようになったそうです。
現在は、お通り保存振興会による趣向を凝らしたイベントへと変化。大名行列、武者行列、母衣(ほろ)、華童子(はなわらべ)からなる行列を組み、勇壮かつ華やかな時代絵巻として総勢約200人が市街地を練り歩きます。

今回は、歴史ある伝統文化行事「お通り」の見どころや魅力をご紹介。併せて、お通り保存振興会のメンバーに、これまでの歩みやイベントにかける思いを伺ったのでレポートします。 

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2024年11月4日(祝)に開催される「お通り」。例年と同じく、東城小学校で開会式とオープニングイベントが開かれ、その後町へと繰り出します。昨年のオープニングでは、お殿様とお奉行様の掛け合いがあったり、お姫様による書道パフォーマンスが行われたりと、盛り上がりを見せました。
ここでの見どころは、武者たちによる勇ましい演武。大将の号令で鉄砲隊と大砲隊が空砲を打ち、爆音をとどろかせます。なかなかの大音響にびっくりしますが、とても迫力がありますよ。

オープニングイベントが終了したら、隊列は一路町中へ。「下にぃ~、下にぃ」の掛け声のもと、ゆっくりと進んでいきます。太鼓や鐘、ほら貝が列を先導し、武者行列、大名行列、母衣、花童子と続きます。
ちなみに母衣とは、本来は、戦国時代の戦場において背後からの矢よけに用いられた武具。

平安末期ごろは鎧の背に五幅ほどの布地を長くたなびかせたものでしたが、室町時代に内部に籠を入れてふくらませたものが用いられるように。さらにそれが江戸時代に入り、本来の「身を守る」意味が転じて、子どもの無病息災を願う、大将人形をのせて花飾りをつけたかたちになったそうです。

東城町においては、1830年の資料にすでに現在のようなかたちの母衣があったと記録されていて、これは日本全国でも非常に珍しいのだそう。近年ではお通り保存振興会によって母衣が複数体復元され、用いられています。
列はさらに進んでいき、三楽荘付近の街並本陣で鉄砲隊の演武が再度行われます。城下町の趣を残す東城路へ差しかかる頃には、周囲の風景と相まって、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのよう。凛々しく雄々しい武者行列、どこか威厳漂う大名行列、お通りのメインでもある華やかな母衣、愛らしい稚児さんが連なった華童子と、どこを切り取っても絵になるきらびやかさ。フィナーレの城山橋は、母衣衆が整列する最大の撮影スポットです。

ゴールは再び、東城小学校へ。こちらにはうどんやたこやき、ビールなど、さまざまな露店が並びます。出発前の腹ごしらえや、ゴール後のおやつタイムに楽しんでみてはいかがでしょうか。

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美しく華やかで、例年2000人近くの観光客が訪れる東城町の伝統文化行事「お通り」ですが、かつては存続の危機もあったそうです。今回、お通り保存振興会の主要メンバーである「竹屋饅頭本舗」代表取締役の谷壯一郎さんに話を伺ったところ、以前はPRの目的で広島市内へ何度も足を運んだり、メディア出演を行って周知に励んできたとのこと。また、イベントの継続自体莫大な費用がかかり、クラウドファンディングを活用して開催資金の調達にも苦心したといいます。
お通り存続の危機を知った京都の繊維メーカーから丸帯の提供を受け、それをほどいて衣装を拵えたこともあったそうです。
「新しく製作したものや保存していたものを修繕して使用するほか、京都の太秦映画村から借りた衣装や小物を使っています。町内で不要な着物や帯の提供を呼び掛けて、出していただいたものを地元のおばあちゃんたちが手縫いで衣装に作り替えたりもしたんですよ」と、谷さん。「また、当日は、ボランティアとして案内係を務める人や駐車場係を引き受ける人など、皆が協力し合います。地元が一丸となってこそ、お通りを実現させることができるんです」と熱を込めて話してくれました。東城の町の人たちの思いがこもったお通りは、だからこそ、見る人の胸を打つものがあるのかもしれません。

お通りに先駆けて、町内では「東城まちなみぶらり散歩ギャラリー」も併せて11月2日(土)~11月5日(火)まで開催。

こちらは東城路周辺の家々や商店が、アートや工芸品を並べていっそうの城下町ムードを盛り上げる催し物。代々受け継がれる伝統工芸品といった珍しいものから、ちりめん細工や盆栽、絵手紙などの心温まる手作り品まで、多種多様な作品が軒先を彩ります。
お通り当日は、地元の菓子や加工品などの特産品販売、その場で楽しめるフードやドリンクもいろいろと用意されるので、併せて町巡りも楽しんでみてください。